近視予防フォーラム(代表世話人:森紀和子 麹町大通り眼科・院長)は、9月17日に、東京・新丸ビルコンファレンススクエアにおいてメディア発表会を開催し、このほど発足した同フォーラムの新体制を発表しました。
また同時に、同フォーラムの活動趣旨に賛同し、科学的根拠に基づく近視進行予防をさまざまな形で実践する企業間の連携の枠組みとして「近視進行予防コンソーシアム」の活動を開始したことを報告。
「近視の進行を予防する」新たな薬剤や医療機器等が相次いで発売された2025年を「近視進行予防元年」と位置づけて、産学でさらに活動を強化することなどを盛り込んだ「近視進行予防宣言」を発表しました。
このメディア発表会では、代表世話人に就任した森紀和子氏(麹町大通り眼科・院長)が、2020年6月の同フォーラム発足以来の活動実績を報告し、以下の新体制を発表しました。
■近視予防フォーラム新体制
▽代表世話人:森 紀和子(麹町大通り眼科 院長)
▽世話人:
〇古川 俊治(参議院議員、近視対策推進議員連盟 事務局長
〇仙田 満(公益社団法人こども環境学会 代表理事、東京工業大学 名誉教授)
〇三浦 豪太(プロスキーヤー、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特任准教授)
〇二宮 さゆり(伊丹中央眼科 院長)
〇松村 沙衣子(東邦大学医療センター 大森病院 眼科 助教)
▽アドバイザー:
〇宇津見 義一(宇津見眼科医院 院長)
〇栗原 俊英(慶應義塾大学医学部眼科学教室 准教授)

【「近視パンデミック」の進行と「低年齢化」の深刻なリスク】
森代表世話人は、改めて世界で「近視パンデミック」と呼ばれる状況が進行している現状を解説。
最新の予測では、2050年には世界人口の半分、約50億人が近視になり、特に日本を含む東アジアでの近視人口の急増が甚だしいことを紹介しました。
中でも注目すべきデータは「近視発症の低年齢化」で、最新の研究では「近視の発症平均年齢が2005年の10.6歳から、2021年に7.6歳にまで低下している」(※引用論文:Chen Z J Glob Health. 2023 Nov 9;13:04144)ことを報告しました。
低年齢で近視を発症すると、その進行も速くなり、強度近視へ進行するリスクが高まると説明しました。
また強度近視はそれ自体が失明につながる危険な疾患だが、それだけでなく、緑内障や網膜剥離など他の深刻な眼の疾患を合併するリスクが高まることも明らかになっているとしました。

【近視対策は「矯正」から「発症・進行予防」の時代へ】
その一方で、長年謎に包まれていた近視のメカニズムの解明は近年急速に進んで来ていることを説明。
近視の直接的な原因である「眼軸長(眼球の奥行きの長さ)の伸張」が、太陽光のある屋外で過ごす時間が長いと抑制されること、そのメカニズムに太陽光の中の紫色の光(バイオレットライト)が関与していることなどが、慶應義塾大学眼科を含む各国の研究者の手で明らかになったことを解説しました。
また同時に、その知見に基づく「進行予防法」の開発も劇的な進化を遂げていることを説明。
近視進行抑制効果を持つ目薬が国内で初めて発売されるほか、近視進行抑制のための医療機器、サプリメントなどの開発も並行して進んでいるとを報告しました。
これらは、「近視は発症してからメガネやコンタクトレンズなどで矯正するもの」という、これまでの常識を大きく覆すまったく新しいものと言え、2025年は差し詰め「近視進行予防元年」と呼べる状況に至っていると解説しました。
森代表世話人は、これらの最新の知見と周辺環境を背景に、家庭でもできる「近視の発症、進行を予防する行動」として、
〇〝就学前からの屋外活動の習慣化〟
〇〝デジタル機器との適切な付き合い方〟
〇〝早期検査と介入〟
の3つを提示しました。
【近視進行予防に取り組む企業によるプラットフォーム「近視進行予防コンソーシアム」】
そして、これら近視に関する最新の情報を土台に、「近視のリスクを正確に理解し、その進行予防によって特に子どもたちの眼の健康を守る」という同フォーラムの取り組みに賛同する企業が参画する枠組み、プラットフォームとして、「近視進行予防コンソーシアム」という活動を始めることを発表しました。
この「近視進行予防コンソーシアム」は、近視予防フォーラムの活動に共感すると共に、実際に近視進行予防の活動を進める企業が連携する仕組です。
医薬品、医療機器やサプリメントの開発などで、近視進行予防に関わる企業だけでなく、多くの子どもとの接点を持つ教育産業などにも広く参画を呼びかけた結果、発足時点に次の5社の参画が決まったことも発表しました。
■参画企業(50音順)
〇SAPIX YOZEMI GROUP
〇株式会社シード
〇株式会社ジンズホールディングス
〇株式会社坪田ラボ
〇ロート製薬株式会社
【コンソーシアム参画企業のトップからフォーラムへ期待のメッセージ】
今回のメディア発表会には、コンソーシアム参画企業から、株式会社坪田ラボ 代表取締役社長:坪田 一男氏(前・近視予防フォーラム代表)、株式会社ジンズホールディングス 代表取締役CEO:田中 仁氏、ロート製薬株式会社 代表取締役会長:山田 邦雄氏、SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表:髙宮 敏郎氏のトップ4人が登壇。
近視予防フォーラムの森紀和子代表世話人のファシリテートのもと、それぞれの事業領域から、近視進行予防コンソーシアムへの期待のメッセージを寄せると共に、今後の取り組みについてのディスカッションを行いました。
ディスカッションでは、近視のメカニズムや進行抑制に関する研究成果を社会に実装する意義や、子どもの教育現場との連携の重要性、そして社会全体で近視への意識を高めることの大切さが強調された。
■登壇者メッセージ
〇坪田氏(坪田ラボ)
「今回のコンソーシアムの立ち上げによって、企業や教育現場と力を合わせ、子どもたちの目を守る正しい情報を広く伝えていけることに大きな意義を感じています」

〇山田氏(ロート製薬)
「私たち企業の役割は、薬や製品の提供にとどまらず、生活習慣や学びの場においても、子どもたちの目を守る環境を整えることにあると考えています」

〇田中氏(ジンズホールディングス)
「メガネは視力矯正だけでなく、多彩な機能を持つ時代です。近視人口の減少のための研究を続け、人々の生活を前向きに支えるアイテムとして、メガネの新しい価値を提供していきます。」

〇髙宮氏(SAPIX YOZEMI GROUP)
「勉強と近視は相反するものと捉えられがちですが、学ぶ力と見る力を同時に育てる教育を実現したいと思います」

近視予防フォーラムでは、これからも近視の正しい理解や知識を広く社会に伝えるための支援、普及、啓発活動に取り組んでいくとしています。
またそうした取り組みの一環として、今回の近視進行予防コンソーシアムの枠組みを活用し、近視進行予防の大切さの意識調査を定点観測的に行い、この意識レベルの向上を一つの指標としていきたいともしています。
■近視予防フォーラムWEBサイト
https://myopia-prevention.jp/